動画の基礎知識

フォーマットやコーデックがなぜこんなに種類があるのか

動画フォーマット・コーデックの選択

以前AfterEffectsでレンダリングする時のオススメフォーマットについて紹介しました。使用するフォーマットは決まっていてもコーデックを統一してほしい願望が強いです!そんなとき、今までの流れから脱却しようと奮闘する企業の働きがあることを知り、大変感銘を受けたので紹介したいと思います。

ほんの一例ではありますが興味を持っていただけると幸いです。今回は一般の動画制作者も多く利用するYouTubeもからめて説明していきたいと思います。

 

誰もが制作者や配信者になる時代

モバイル端末が普及して誰でも動画・写真撮影が可能になりました。専門性が必要だったデジタル機器は生活に溶け込み、簡単に扱われるようになっています。その背景には数々のメーカーが存在します。

総務省の調査(2017年度)によると一家族に一台情報通信機器がある確率は約95%であると発表されています。個人ではモバイル端末(PHS・携帯電話)を含めると84%に及ぶとされています!ちなみにPCが一家族に一台ある確率は約73%となっています。モバイルよりは低いですがそれでも7割はすごい数字ですよね!

その数々のメーカーの中にはOS・ソフトウェア・アプリケーションを開発しているところがあります。事業の一環としてApple(アップル)は動画のフォーマット(動画を収めるケース)としてMOVというフォーマットを開発しました。YouTubeで推奨されているMP4はMOVから派生したファイルフォーマットです。ライバルであるMicrosoft(マイクロソフト)はAVIWMVを開発しています。

 

YouTube でサポートされているファイル形式

  • MOV
  • MPEG4
  • MP4
  • AVI
  • WMV
  • MPEGPS
  • FLV
  • 3GPP
  • WebM
  • DNxHR
  • ProRes
  • CineForm
  • HEVC(h265)

引用元:YouTubeヘルプ(2019/08現在)

各動画フォーマットは対応するコーデック(データを扱うルール)を使用して圧縮・伸長を行っています。企業は製品の差別化だけでなく広くシェアを獲得するために「国際標準規格」と指定されているコーデックを含んでいます。それがMPEG2H.264といった特許権が発生するコーデックです。メーカーは特許権を含めた料金で製品を販売することになるので問題がありませんでした。むしろそれはメリットとなり「高度で標準的なデジタル機能を使用できること」を売りにできたのです。しかし、そこに疑問を持つ企業があったというのです。その一つがGoogle(グーグル)でした。

 

ロイヤリティーフリーにしてコーデックを統一

グーグルは2005年に世界最大の動画共有メディアであるYouTube(ユーチューブ)を買収しています。ユーチューブは幅広い層のユーザーを獲得しました。利用者が増えると制作・配信する人が増えます。人が集まるとよい広告掲載場所になるためです。動画=YouTube=グーグルという関係性において、グーグル側が大きな権限を持っていることがわかります。その過程において動画のコーデックが多種存在していること、特許権などでお金がかかっていることに疑問をいだきました。利用する側にとって混乱する要素を省き、世界中の人が使えるようにしたいと考えたのです。

Googleはロイヤリティーフリーで高精度のコーデックを作ること考えました。そこで生まれたのがVP9です。VP9は精度が良く普及もしているH.265を凌駕する目的で開発されました。しかし、スマートフォンの普及とともに広く採用された下位のH.264が優位でありその傾向は今もまだ続いています。上位版であるH.265はさらに軽量化が必要なもの(UHD Blu-rayなど)に対応するために使用されています。

 

さらなる改良を進める

VP9の上位版としてVP10を開発していたグーグルでしたが、Alliance for Open Media(AOMedia)が組織され、ロイヤリティーフリーでオープンなストリーミング向けのコーデックを生みだすことになりました。そこで登場したのがAOMedia Video 1(AV1)です。このAV1について驚くのは開発協力や出資が名の知れた大手企業によるものだということです!今までのコーデックを凌駕することで置き換えを実現するための意気込みが感じられます。

掲載元:Wikipedia

これから先、AV1の組み込みや置き換えが広がり統一されたとき、ようやくユーザーである私たちは混乱から解放されます。コーデックを統一してほしい!そんな要求がかなってしまうかもしれないのです。Alliance for Open Media(AOMedia)の主催者として参加しているAdobeですが、現段階ではAfter EffectsやMedia EncoderではAV1を使用して出力することができません。いつかは組み込まれると信じて待っています。YouTubeも「新しい技術なので高い処理能力を持ったPCが必要」と記載されているので仕方ないのかもしれません。

それでも「自分でAV1変換してみたい!」という人はConvertioから変換を試してみてはいかがでしょうか。私も変換してみましたので良ければご覧ください。

時間はかかりますが、体験するにはお手軽だと思います。この13秒動画の変換に1時間ぐらいかかりました。それではまた!